長期投資とは何か?
複利効果を最大限に活用する長期投資の基本
長期投資とは「複利効果」の恩恵を最大限に享受するために、金融商品を長期間(一般的に10年以上)保有し続ける投資手法です。
金融商品のなかには、時間の経過とともに価値が安定的に少しずつ上昇するものがあります。
短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、じっくりと腰を据えて、時間という最大の味方を活用しながら資産を増やしていくことを目指します。
長期投資が有効なのは、世界経済や企業の成長、そしてインフレーションというマクロな潮流に乗ることができるからです。
長期投資が資産形成に有効な3つの理由
- 経済成長の恩恵を受ける:発展している国の株式市場に投資すれば、その国の経済が成長する恩恵を享受できます。特に米国や新興国市場への長期投資は、経済成長率の高さから資産増加が期待できます。
- 企業成長による株価上昇と配当増加:成長している優良企業の株を保有すれば、企業の売上や利益が増加するにつれて、株価の上昇や配当金の増加が期待できます。
- インフレーション対策として有効:インフレが進み、物価が上昇し通貨の価値が下がっても、それに伴って資産の額面も増加するため、現金や預貯金だけを持っているよりも、実質的な価値の目減りを防ぐことができます。
このように、長期投資は、現在保有している資産の価値に利益が上乗せされていくことで、雪だるま式に資産が増えていく複利効果を最大限に活用する戦略です。
長期投資で成功するための5つの戦略
長期投資を成功させるためには、以下の戦略を組み合わせることが重要です。
長期的な価値上昇を見据えた銘柄選択
この戦略の根本にあるのは、投資対象が他の金融商品よりも長期的に見て価値が上昇するという強い信念です。
世界経済や優良企業の成長が続くという前提に立ち、その成長の恩恵を享受しようという考え方です。
歴史的に見ても、S&P500やNASDAQ100などの主要株価指数は、短期的な下落はあっても長期的には右肩上がりの成長を続けています。
時間を味方につけて複利効果を最大化する
人生の残り時間や、当面使う予定のない「余剰資金」を長期投資に回すことで、複利効果の利点を最大限に活かせます。
時間が長ければ長いほど、複利効果は加速度的に資産を増やしていきます。
例えば、年利5%で運用した場合、元本100万円は20年後には約265万円、30年後には約432万円にまで成長します。
これが複利効果の威力です。
インデックス投資で低コスト運用を実現
S&P500やNASDAQ100、日経225などの主要な株価指数は、定期的に構成銘柄を見直すことで、常にその時代を代表する優良企業を組み入れています。
これらの指数に連動する投資信託やETFは、非常に低い手数料(0.1%以下)で運用されているため、質の高いポートフォリオを効率的に、かつ低コストで保有し続けることができます。
NISA・iDeCoなどの税制優遇制度を活用
NISAやiDeCo、401kなど、長期投資を対象とした国の税制優遇制度を積極的に利用します。
これらの制度を活用すれば、運用益や配当金、さらには拠出金そのものまで非課税になるなど、資産形成を強力に後押ししてくれます。
特に新NISAは年間360万円まで非課税で投資できるため、長期投資との相性が抜群です。
分散投資でリスクを最小化
長期投資では、複数の銘柄・セクター・地域に分散することでリスクを抑えます。
インデックス連動型の投資信託やETFなら、一つの商品で数百から数千の銘柄に自動的に分散投資できるため、長期投資に最適です。
長期投資におすすめの金融商品と銘柄選び
長期投資に適しているのは、基本的に安定的に上昇していくことが期待できる金融商品です。
長期安定成長が期待できる投資商品一覧
| 商品カテゴリー | 具体例 | 特徴とメリット |
|---|---|---|
| インデックス連動型投資信託 | eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)、楽天・全米株式インデックス・ファンド | 特定の株価指数(S&P500、NASDAQ100、日経225、香港ハンセン指数、Nifty50など)の動きに連動することを目指す投資信託。これ一つで多数の銘柄に分散投資できます。手数料が低く、長期投資に最適。 |
| インデックス連動型ETF | SPY(S&P500連動)、QQQ(NASDAQ100連動)、VOO、VTI | 上記の投資信託のETF版。リアルタイムで売買できる利便性があり、より低コストな運用が可能です。 |
| テーマ型投資信託 | iFreeNEXT FANG+インデックス | 特定のテーマやセクターに特化した投資信託。高い成長が期待される分野に集中投資できます。例:FANG+(GAFAMなど優良ハイテク10銘柄)など。 |
| 長期成長株(個別銘柄) | 以下の記事を参照 🔗株価は何で決まるのか?|仕組みと要因のまとめ 🔗優良株の探し方|連続増配株から見つける私の手法 | 長期的な成長が期待できる優良企業の個別株。高いリターンが期待できる反面、銘柄選択のスキルが必要。 |
これまで実績のある長期投資商品トップ3
リーマンショック以降の約10年から15年の間は、インデックス連動型投資信託がすばらしいパフォーマンスを上げてきました。
今後の上昇に期待するのも、有効な投資戦略のひとつです。
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):信託報酬が最低水準で、米国の代表的な500社に分散投資
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):全世界の約3,000銘柄に分散投資できる
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド:米国株式市場全体に投資できるバンガード社のVTIに連動
長期成長が期待できる個別銘柄
せっかく投資をするなら自分が選んだ個別銘柄に投資したいと考える人もいるでしょう。
長期的な成長が期待できる業種や、業績が安定している企業など、自分の調査・分析の結果で選んだ個別銘柄を長期投資として購入するのも、楽しみ方のひとつです。
うまくいけば、インデックス連動型投資信託より高いリターンが得られるかもしれません。
長期投資の始め方|相場状況別の購入戦略
長期投資は、開始した時期によって成果が大きく変わることがあります。
例えば、高値で投資を始め、その後数年間相場が低迷した場合、資産がなかなか増えないという状況に陥ります。
そのことを考慮して購入戦略を考えます。
長期投資は10年~20年の期間を一つのサイクルとして考えます。
そして、手持ちの投資資金のうち、長期投資に回す分をあらかじめ決めておき、それを一度に投入するのではなく、時期を分けて購入します。
相場低迷期の購入戦略:絶好の買い場
数年前に下落局面があり、低位で横ばいになっている期間は長期投資を開始する絶好の時期です。
長期投資のために用意した資金を数年かけて分散して購入します。
用意した資金で全部購入し切ったら、給与などの一部から定期購入(積立投資)を続けます。
具体的なアクション:
- まとまった資金がある場合:12〜36ヶ月に分けて毎月定額購入
- 給与からの積立:月1〜5万円程度の積立投資を開始
相場上昇期の購入戦略:慎重に参入
長期投資としては若干乗り遅れた状況です。用意した資金の一部でまず一括で購入し、残りの資金で分散して購入します。
用意した資金で全部購入し切ったら、給与などの一部から定期購入を続けます。
具体的なアクション:
- まとまった資金の30〜50%を初回に投資
- 残りを6〜12ヶ月に分けて投資
- 月々の積立投資も並行して開始
相場割高期の購入戦略:定期購入のみ継続
長期投資としては慎重になるべき期間です。この記事を執筆している2025年はこの期間に相当します。
さらなる上昇は期待できますが、下落のリスクも十分に考慮する必要があります。
この期間は、定期購入は継続しつつも、それ以外の資金の投入は避けるのが賢明です。
具体的なアクション:
- 新規のまとまった資金投入は見送り
- 月々の積立投資は継続(ドルコスト平均法)
- 相場調整を待つ姿勢を維持
分散投資の重要性と実践方法
長期投資を個別株で行う場合は、リスクを管理するために分散投資が不可欠です。
効果的な分散投資の3つのポイント:
- 銘柄の分散:個別銘柄では少なくとも10銘柄、ETFや投資信託でしたら100銘柄以上に分散された銘柄を保有し、特定の銘柄が低迷してもポートフォリオ全体への影響を抑えます。
- 業種の分散:IT、金融、医療、消費財など、複数の異なる業種に分散することで、特定のセクターの不調によるリスクを軽減できます。
- 地域・資産クラスの分散:米国株、日本株、新興国株、債券など、様々な地域や資産クラスに分散することも有効です。
多数の優良銘柄で構成されたインデックス連動型の投資信託やETFを選ぶことは、最も手軽で効率的な分散投資の方法と言えます。
長期投資の出口戦略|利益確定と取り崩しのタイミング
長期投資は「ずっと持ち続ける」ことが基本ですが、人生の節目や相場の状況によっては、部分的に売却を検討するタイミングも出てきます。
相場下落局面での出口戦略:段階的な利益確定
長期投資をしていると、10年から20年の期間に一度か二度発生するような大きな下落局面に遭遇するでしょう。
それに備えて、割高な局面が続いている時に予め一部を売却したり、下落局面と判断した場合に一部を定期的に売っていくことは有効な戦略です。または、定期購入をしばらく止めることも選択肢としてあります。
そして、下落後の低迷した期間にその資金の一部で再度購入することも検討します。
注意点:ただし、下落局面に遭遇せずに上昇し続けて、想定どおりにならないことがあります。相場が想定どおりに動くかどうかに賭ける出口戦略ですので、失敗する可能性も大いにあります。それを踏まえて少額で対応するか、割り切る前提で実施します。
ライフイベントでの取り崩し:必要な時に一部売却
人生の重要な局面(住宅購入、子どもの教育費、医療費など)でまとまった資金が必要になった場合、無理に借金をするよりは、長期投資で積み上げた資産の一部を取り崩してもよいと考えています。
取り崩しの目安:
- 住宅購入時:ポートフォリオの10〜30%
- 教育資金:必要額に応じて段階的に
- 緊急時の医療費:必要最小限
老後の定期取り崩し:計画的な資産活用
人生の終盤になって給与収入がなくなった後は、長期投資から取り崩して生活費などに充てることになります。
いざ取り崩そうとした時に相場が下落局面にあると、大きな損失を確定させることになりかねません。
これを避けるために、人生の終盤に入る前ぐらいに差し掛かったときから相場が割高な時期を選んで少しずつ定期的に取り崩すことを考えます。
推奨される取り崩し方法:
- リタイア5〜10年前から徐々に取り崩し開始
- 年間ポートフォリオの3〜4%程度を目安に
- 相場が好調な時期に多めに取り崩し、不調時は控えめに
人生の終盤になると投資でリカバリーするのは難しいので、欲を出さずに自分が納得する利益があれば取り崩すべきです。
長期投資のメリット
高い勝率と歴史的実績
世界は技術革新で発展し、インフレによってお金の価値は下がる傾向にあります。
長期的に見ればそれらが株価などに反映されることになります。
歴史的に見ても、戦争や天災といった大きな危機を乗り越えて株価は上昇してきたため、長期投資は高い勝率が期待できる手法です。
データで見る長期投資の実績:
- S&P500の過去30年間の平均年率リターン:約10%
- 20年以上保有した場合の元本割れ確率:ほぼ0%
- 配当再投資による複利効果で資産は2〜3倍に
シンプルで続けやすい投資手法
簡単に言えば長期間保有しておくだけの手法なので、投資していることを忘れなければ問題ありません。
購入後は放置し、定期的に積み立てるという単純な手法で始められます。
長期投資が続けやすい理由:
- 毎日の値動きをチェックする必要がない
- 高度な投資知識や分析スキルが不要
- 時間がない会社員でも実践可能
- ストレスが少なく継続しやすい
税制優遇でさらに有利
NISA口座での長期投資なら、運用益が非課税になるため、通常の課税口座よりも20.315%分有利です。
これは長期で見ると大きな差となります。
長期投資のデメリットとリスク管理
長期低迷リスクへの対処法
日本の「失われた30年」やアメリカのITバブル崩壊後のように、市場が長期的に低迷する時期は資産が増えないことになります。
それを考慮して購入商品や購入時期、投資資金を考える必要があります。
リスク軽減策:
- 成長が期待できる市場(米国、インドなど)に投資
- 全世界分散型の商品を選ぶ
- 日本株のみに集中投資しない
- 定期購入で平均取得単価を下げる
資金が拘束されることへの備え
急な出費や他の投資機会があっても簡単には取り崩せないので、それらとは別の拘束される前提の長期投資用の資金で運用すべきです。
資金管理の基本ルール:
- 生活費の6ヶ月〜1年分は現金で確保
- 5年以内に使う予定の資金は投資しない
- 余剰資金のみで長期投資を行う
- 緊急予備資金は別途確保しておく
インフレリスクと為替リスク
長期投資では、インフレ率を上回るリターンを目指すことが重要です。
また、海外資産への投資では為替変動のリスクも考慮する必要があります。
対策:
- 株式投資はインフレヘッジとして有効
- 複数通貨に分散投資する
- 為替リスクは長期では平準化される傾向
よくある質問(FAQ)
長期投資は何年くらい続けるべきですか?
長期投資は一般的に10年以上、理想的には20〜30年以上の期間を想定して行います。
期間が長いほど複利効果が大きくなり、短期的な市場変動の影響を受けにくくなります。
歴史的データでは、S&P500などの主要指数は20年以上保有すると元本割れのリスクがほぼゼロになることが示されています。
ただし、ライフステージに応じて柔軟に調整することも重要です。
長期投資と短期投資の違いは何ですか?
長期投資は10年以上の保有を前提に複利効果と経済成長の恩恵を受ける手法で、頻繁な売買は行いません。
一方、短期投資(デイトレードやスイングトレード)は数日から数ヶ月で売買を繰り返し、価格変動から利益を得る手法です。
長期投資は手間が少なく税制優遇も受けやすい反面、資金が拘束されます。
短期投資は流動性が高いものの、取引コストや税金が多くかかり、高度なスキルが必要です。
長期投資におすすめの銘柄は何ですか?
S&P500や全世界株式に連動するインデックス型投資信託・ETFが最もおすすめです。
具体的には「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」「楽天・全米株式インデックス・ファンド」などです。
これらは数百〜数千の企業に自動分散投資でき、手数料も年0.1%以下と非常に低コストです。
個別株に投資する場合は、自分でしっかり調査・分析して、長期成長が期待できる企業に投資すべきです。
個別株の場合は、少なくとも10銘柄以上に分散することが重要です。
長期投資で損をすることはありますか?
長期投資でも損失リスクはあります。
特に日本の「失われた30年」のように、特定の市場が長期低迷する可能性や、投資開始時期が高値圏だった場合、長期間含み損を抱えることがあります。
また、個別株の場合は企業倒産のリスクもあります。
これらのリスクを軽減するには、(1)成長市場への投資、(2)複数銘柄への分散、(3)時間分散購入、(4)余剰資金での投資、という4つの原則を守ることが重要です。
NISA口座での長期投資のメリットは?
NISA口座での長期投資には大きなメリットがあります。
新NISAでは年間360万円まで投資でき、運用益や配当金が無期限で非課税になります。
通常の課税口座では利益に対して20.315%の税金がかかりますが、NISA口座ならこれがゼロです。
例えば100万円の利益が出た場合、課税口座では約20万円が税金として引かれますが、NISA口座なら全額受け取れます。
長期投資では複利効果により利益が大きくなるため、非課税メリットも絶大です。
積立投資と一括投資、どちらが有利ですか?
長期的には一括投資の方がリターンが高い傾向にありますが、タイミングリスクがあります。
相場が高値圏にある時に一括投資すると、その後の下落で大きな含み損を抱える可能性があります。
一方、積立投資(ドルコスト平均法)は購入タイミングを分散することで平均取得単価を平準化し、心理的なストレスも軽減できます。
おすすめは、まとまった資金がある場合でも12〜36ヶ月に分けて投資し、さらに毎月の積立投資も併用する方法です。
長期投資で月々いくら積み立てればいいですか?
積立額は個人の収入や生活費、目標額によって異なります。
標準的な収入がある場合、一般的には手取り収入の10〜20%が目安です。
例えば手取り月収30万円なら3〜6万円程度です。重要なのは無理のない金額で継続することです。
少額でも長期間続ければ複利効果で大きく成長します。
例えば月3万円を30年間、年利5%で運用すると約2,500万円になります。
まずは月1万円から始めて、昇給時に増額するなど、段階的に増やしていくのも良い方法です。
長期投資中に暴落が起きたらどうすればいいですか?
長期投資中に暴落が起きても、慌てて売却しないことが最も重要です。
過去のデータでは、リーマンショックやコロナショックなどの大暴落後も、数年以内に株価は回復し、その後さらに上昇しています。
暴落時にすべきことは
(1)積立投資を継続する(可能なら増額も検討)、
(2)ポートフォリオを確認するが売却しない、
(3)安値で買い増すチャンスと捉える、
という3点です。長期投資家にとって暴落は「バーゲンセール」であり、恐れる必要はありません。
長期投資で心の安定を保つ5つの心構え
長期投資の成功には、メンタル面が非常に重要です。以下の点を意識することで、心の安定を保つことができます。
長期投資を続けるためのマインドセット
心の安定メモ
- 投資戦略への信頼:戦略とリスクは単純なので、後は買った銘柄が上昇することを信じることです。過去のデータが示す通り、優良なインデックスは長期的に成長してきました。
- 短期変動を気にしない:長期の投資であるから、短期の下落は気にしないことです。一時的な含み損は長期投資では「通過点」に過ぎません。
- 余裕資金での投資:一部の余裕資金を投入しているだけだということを認識することです。生活に必要な資金には手をつけていないという安心感が重要です。
- 歴史に裏打ちされた戦略:過去の事例を踏まえて考えられた戦略なので、これが最善の策だと信じることです。
- 定期的な見直し:年に1〜2回程度、ポートフォリオを確認し、必要に応じてリバランスを行う。ただし、頻繁な売買は避ける。
そうすれば、心穏やかに投資することができます。相場の上下に一喜一憂せず、淡々と積立を続けることが長期投資成功の秘訣です。