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アメリカの消費者物価指数(CPI)を分析|インフレは収まったか?

アメリカの政府機関閉鎖のなか、2025年10月24日(金)に消費者物価指数(CPI)が発表されました。

結果は前年比3.0%(予想3.1%)と、インフレは落ち着いて来ていますが、注目すべき内容がいくつかあります。

この記事では、2025年9月のCPIを分析します。


2025年9月の消費者物価指数(CPI)の結果

消費者物価指数(CPI)主要指標の結果

2025年9月のアメリカの消費者物価指数(CPI)の結果は以下のとおりでした。

CPI種類前回予想結果
9月消費者物価指数(CPI)(前月比)0.4%0.4%0.3%
9月消費者物価指数(CPI)(前年同月比)2.9%3.1%3.0%
9月消費者物価指数(CPIコア指数)(前月比)0.3%0.3%0.2%
9月消費者物価指数(CPIコア指数)(前年同月比)3.1%3.1%3.0%

全体的に予想より低い結果となっており、コア指数(食料とエネルギーを除いた基調的なインフレの指標)は前回より低下しました。


消費者物価指数(CPI)の詳細

米国労働統計局(BLS: Bureau of Labor Statistics)が公表した2025年9月の消費者物価指数(CPI)の詳細は以下のとおりです。

🔗BLSのホームページリンク

項目前年同月比変化率(%)
全項目3.0
食料3.1
家庭内食料2.7
外食3.7
エネルギー2.8
エネルギー商品-0.4
ガソリン(全種類)-0.5
燃料油4.1
エネルギーサービス6.4
電力5.1
ガス事業(導管供給ガス)11.7
食料とエネルギーを除く全項目3.0
食料品とエネルギー商品を除く商品1.5
新車0.8
中古車およびトラック5.1
衣料品-0.1
医療関連商品0.7
エネルギーサービスを除くサービス3.5
住居費3.6
交通サービス2.5
医療関連サービス3.9

食料品やエネルギーは上昇しています。これはコストプッシュ型インフレを表しており、トランプ関税や輸入品の値上がりの影響と考えられます。

一方で、インフレ率の導出において高い割合を占める住居費は3.6%と順調に下がっています。また、食料品やエネルギーを除いた項目も低下しています。

これは消費者需要が弱いことを表しています。

コストプッシュ型インフレと消費者需要の弱さがある程度鮮明になっている結果だと言えます。


政策金利の連続利下げは高確率|弱い消費者需要

これまでも政策金利の連続利下げの予想はありましたが、消費者物価指数(CPI)の結果、その予想を補強したことになったと思います。

食料とエネルギーを除くコアCPIが連続で低下し、特に最大構成要素である住居費(Shelter)が安定して低下(3.6%)していることは、FRBが進めてきた金融引き締めが需要抑制に成功していると言えます。

一方で、食料(3.1%)やエネルギーサービス(6.4%、ガス事業11.7%)は高止まりしており、供給側(コストプッシュ型)のインフレ圧力が依然として存在することを示しました。

食料やエネルギーサービスのインフレ圧力は一時的である可能性があるため、政策金利は利下げの判断になります。

消費者の需要は弱いですが、AIをはじめとするハイテク分野は好調です(設備投資が結果に結びついていないという話はありますが)。

好調な業種には注意しながら投資して、それ以外は敬遠したほうがいいでしょう。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 9月のCPI(消費者物価指数)の「コア指数」が低下したことは、具体的に何を意味しますか?

A. 「コア指数(Core CPI)」は、価格変動の大きい食料とエネルギーを除いた、物価の基調的な動きを示す指標です。これが低下したということは、一時的な要因(原油価格など)を除いた国内の需要に基づくインフレ圧力が弱まってきていることを意味します。FRB(米連邦準備制度理事会)は、金融政策(利上げ・利下げ)を決定する際、このコアCPIの安定化を最も重視します。


Q2. エネルギー価格が不安定な中、なぜFRBの利下げ期待が高まるのですか?

A. FRBの主な使命は、需要サイドの過熱を抑え、基調的なインフレ率を目標水準(通常2%程度)に戻すことです。9月CPIは、その基調を示すコアインフレ(特に住居費など)が鈍化していることを示しました。エネルギー価格の上昇は供給側の要因(コストプッシュ)が強く、金融引き締めではコントロールしにくいため、FRBは需要抑制が成功していると判断し、利下げに踏み切る可能性が高いと市場は見ています。


Q3. 「住居費(Shelter)」の低下がインフレに与える影響は大きいですか?

A. はい、非常に大きいです。住居費(家賃や帰属家賃など)はCPIの算出において約3分の1を占める最大の項目です。住居費の変動は遅行性(市場の家賃が遅れてCPIに反映される性質)があり、これが3.6%という安定した水準で低下トレンドを続けていることは、今後数ヶ月間にわたり全体のコアCPIを押し下げる強力な要因として働くと予想されます。


Q4. コアCPIに含まれない「中古車およびトラック」の価格が5.1%と高いのはなぜですか?

A. 中古車価格は、パンデミック後のサプライチェーンの混乱による新車不足の影響を長く受けてきましたが、現在は供給が回復しつつあります。しかし、依然として需要が強く、特にリースアップ車両の流通価格が高止まりしているため、5.1%という高い伸びを維持しています。中古車価格は変動が激しいですが、全体のコアインフレ率には影響を与えるため、FRBも注視しています。


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