2025年10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利を0.25ポイント引き下げる決定が発表されました。
これは9月に続いて2会合連続の利下げです。
アメリカ経済の減速懸念を背景にした決定ですが、一方で「12月会合での追加利下げは既定路線ではない」との発言もあったようです。
本記事では、最新のFOMC声明内容、アメリカ経済の現状を踏まえて、今後の投資戦略を考察したいと思います。
2025年10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の概要
FOMCの政策金利決定概要
今回のFOMCでの決定事項など、投資戦略を考えるうえで抑えておくべき概要は以下のとおりです。
- 政策金利:4.00-4.25% から 3.75-4.00% へ0.25ポイント利下げ(2会合連続)
- 1名が金利据え置きを支持、1名が0.5ポイント利下げを支持。ただし、0.5ポイント利下げを支持したのはトランプ大統領が送り込んだマイラン氏
- パウエル議長が「12月追加利下げは既定路線からほど遠い」と発言
- 量的引き締め(QT):12月1日で終了を発表
これにより、「QT終了=景気減速シグナル」と捉える動きも強まっています。

アメリカ経済の現状とFOMCの背景要因
2025年10月1日からアメリカの政府閉鎖が始まり、現在も続いています(理由は2026会計年度の予算の不成立(つなぎ予算の期限切れ))。
9月の雇用統計などのいくつかの経済指標が発表されていない状況での利下げのため、今回の利下げは9月からの既定路線だったと言えます。
パウエル議長は「12月追加利下げは既定路線からほど遠い」と発言しましたが、これまでも「データ次第」と発言していたこともあり、政府閉鎖が解除されて雇用統計のデータを見ない限り確信できないという意味だと推察されます。
QT(量的引き締め)終了と景気減速シグナル
パウエル議長は、消費者物価指数(CPI)が目標の2%より高い3%前後の状況にも関わらず、12月1日に「証券保有総額の縮小」を終了、つまり、量的引き締め(QT: Quantitative Tightening)を終了すると言っています。
これは、アメリカの景気が予想以上に減速している可能性を示唆します。
FRBがインフレよりも景気後退リスクを優先していることを意味します。
現在のアメリカの経済状況
好調セクター|ハイテク、AI、仮想通貨関連の金融、電力設備、ゴールド関連
以前の記事でも書きましたが、現在のアメリカの株式市場は、ハイテク、AIなどの限られた業種のみが好調です。
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米国株はまだ成長するのか?|S&P500のPER・業種別動向から見る投資戦略
2025/11/2 S&P500 PER
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もう少し細かく見ると以下に関係する銘柄が好調です。
- ハイテク:クラウドなど既存のシステムを乗せ換えるプラットフォームなど
- AI:生成AIや機械学習ソフトウェアの開発
- 電力設備:AIのためのデータセンター構築やそのインフラ設備
- 仮想通貨関連の金融:アメリカドルの代替としての資産保全先(取引所関連など)
- ゴールド関連:アメリカドルの代替としての資産保全先(ゴールド採掘会社など)
しかし、これら以外の銘柄や業種(製造など)は厳しい状況が続いています。
最近は、これまで下落していたヘルスケアセクターが盛り返していますが、依然として、これら以外の業種の株価は伸び悩んでいる状況です。
今回の利下げはこのような厳しい業種の減速を和らげるための対応と言えます。
信用不安の兆し|サブプライム自動車ローン/プライベートバンキング
最近、サブプライム自動車ローン会社の破綻や、プライベート・クレジット(シャドーバンキング)の不正疑惑が報道されました。
これは信用力の低い層への過剰な融資や、実態が見えにくい融資における不正です。
2008年のリーマンショック前にも似たような問題が発生しました。
リーマンショック前のサブプライム住宅ローンの問題では、信用力の低い層に高金利で融資したり、それを証券化してリスクが見えにくくなったりしていました。
これらは景気循環サイクルで発生する現象の一部です。
景気が過熱して、行き過ぎた融資が高金利や返済延滞率の上昇で耐え切れなくなって明るみに出てきたものだと推察します。
今回のFOMCの利下げの決定は、このような信用不安が急に大きくならないような予防的措置とも言えます。
消費者物価指数(CPI)が約3%で高止まり/住宅関連指標の低下
コロナショック後の金融緩和の影響が未だに尾を引いていたり、トランプ大領領の関税の増税で消費者物価指数は約3%と高い状況が続いています。

このような状況で利下げをすると消費者物価指数の上昇が再燃引用元するリスクがありますが、それでもFOMCで利下げを決定したということは、景気減速を懸念しているのだと推察できます。
また、住宅関連の経済指標も下落しています。
以下はアメリカの住宅着工許可件数ですが、新築住宅価格が高止まりを影響してか、下落しています。

これらの指標も今回の利下げに影響したと言えるでしょう。
2025年3QのMETAの決算悪化|大幅減益
2025年第三四半期の決算で注目されたのはMETAの決算が予想を大幅に下回ったことです。
一株当たりの利益(EPS)が予測$6.72に対して結果$1.05、前年同期比マイナス84%と大きく落ち込み、株価は1日で10%以上下落しました。

GAFAMやFANG+、マグニフィセント7などの主要なハイテク銘柄がありますが、METAは最も景気動向の影響を受けやすい銘柄であるため、今回の決算は注目に値します。
1回の四半期決算だけで結論は出ませんが、ハイテク銘柄の先行指標になるからです。
今後の米国株投資戦略
今回のFOMCの0.25ポイントの利下げとアメリカの経済状況を見ると、米国株については以下の投資戦略を継続するのが私の結論になります。
- 個別銘柄はハイテクを中心とした上昇している銘柄に集中
- 現金比率を高めて追加投資は控える
- 利確後に、さらに上昇しても気にしない
- 下落が鮮明になった場合に備えて手仕舞いを想定しておく
- 長期投資のインデックス連動の投資信託は継続して積み立てるが、いったん止めてもよい
これから11月となり、通常であれば上昇する期間ではありますが、今年は9月の下落が無かったこともあり、通常と違うということも想定して株式市場を注視しておくことが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. FOMCとは何ですか?どんな役割があるのですか?
A1.
FOMC(米連邦公開市場委員会)は、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が行う金融政策を決定する会議です。
主な目的は、政策金利(フェデラルファンド金利)の調整を通じて、物価安定と雇用最大化を達成することです。
金融市場では、FOMCの金利判断がドル相場や株価、金利動向に大きな影響を与えます。
Q2. 2025年10月のFOMCでは何が決定されたのですか?
A2.
2025年10月のFOMCでは、政策金利を0.25ポイント引き下げることが決定されました。
これにより、金利は4.00〜4.25% → 3.75〜4.00%に引き下げられました。
また、量的引き締め(QT)を12月1日で終了する方針も示され、景気減速への懸念が強まっています。
Q3. 利下げが行われると株式市場にはどんな影響がありますか?
A3.
一般的に利下げは株式市場にプラス要因とされます。
金利が下がることで企業の資金調達コストが低下し、投資活動が活発化するためです。
ただし、今回のように「景気減速を背景にした利下げ」の場合、短期的には株価が不安定になる可能性があります。
投資家はセクター選別とリスク管理が重要です。
Q4. なぜQT(量的引き締め)の終了が注目されているのですか?
A4.
QT(Quantitative Tightening=量的引き締め)とは、FRBが保有する国債などの資産を減らし、市場の資金を吸収する政策です。
QTの終了は「景気への悪影響を避けたい」というFRBの姿勢を示すサインとされます。
つまり、QT終了は金融緩和への転換点として市場では注目されています。
Q5. 現在のアメリカ経済はどのような状況ですか?
A5.
アメリカ経済は政府閉鎖の影響や雇用統計の未発表などで不透明感が高まっています。
一方で、AI・電力設備・ゴールド関連などの一部業種が堅調に推移しています。
しかし、消費者物価指数(CPI)は3%前後で高止まりしており、インフレと景気減速のはざまで難しい局面にあります。
Q6. 今後の米国株投資戦略はどう考えればよいですか?
A6.
短期的には現金比率を高めて様子見が賢明です。
好調なAI・ハイテク関連株を中心に選別投資を行い、景気後退リスクに備えるのがポイントです。
また、長期的にはインデックス投資の積立継続や下落局面での分散投資も有効な戦略です。
Q7. CPI(消費者物価指数)が3%で高止まりしているのに、なぜ利下げしたのですか?
A7.
通常はインフレ抑制のために金利を引き上げますが、今回は景気減速を抑えるための利下げです。
FRBは「インフレ再燃のリスクよりも、景気悪化リスクの方が大きい」と判断したと考えられます。
そのため、QT終了と利下げの両方で経済の下支えを図っています。
Q8. METAの決算悪化はどんな意味を持ちますか?
A8.
METAの2025年3Q決算はEPSが前年同期比で84%減少と大幅悪化しました。
METAは景気動向に敏感なハイテク株であるため、この結果はハイテクセクター全体の先行シグナルとなる可能性があります。
投資家は今後のハイテク企業の決算にも注視すべきです。